スイフトジーン® ノロウイルスGⅠ/GⅡ「カイノス」とは
核酸増幅技術NASBAと簡易検出法の核酸クロマトグラフィーを組み合わせた手法により、ノロウイルスを検出します。NASBA Amplificationキットについて
スイフトジーン® ノロウイルスGⅠ/GⅡ「カイノス」の特徴
- 核酸増幅技術NASBA法と核酸クロマトグラフィーを組み合わせた簡易迅速検出
- ノロウイルスのGⅠ/GⅡを同時に配列特異的に検出
- 測定に必要な時間は、およそ 2 時間
ノロウイルスとは?
ノロウイルス(Norovirus)は急性胃腸炎の病原体として知られる 1 本鎖 RNA ウイルスです。感染力が強く、あらゆる年齢層に感染し集団食中毒や集団感染を引き起こすため、公衆衛生上重要なウイルスです。ノロウイルスは遺伝的に多様であり、主に GenogroupⅠ(GⅠ)及び GenogroupⅡ(GⅡ)の 2 つの遺伝子群に分類され、さらに各遺伝子群は GⅠで 15 種類、GⅡで 18 種類の遺伝子型 genotype に分類されます。 ノロウイルスの粒子は直径 30-38 nm の正二十面体であり、ウイルスの中では小さい部類に属します。
エンベロープを持たないRNAウイルス
カリシウイルス科(Family:Caliciviridae)
ノロウイルス属(Genus:Norovirus, “Norwalk-like virus”)
(SRSV: Small Round-Structured Virus)
ノーウォークウイルス(Species: Norwalk virus)
サポウイルス属(Genus: Sapovirus, “Sapporo-like virus”)
サッポロウイルス(Species: Sapporo virus)
ラゴウイルス属(Genus Lagovirus)
RHDV(Rabbit hemorrhagic disease virus)
ベシウイルス属(Genus Vesivirus)
VESV(Vesicular exanthema of swine virus)
感染経路
ノロウイルスによる感染症は、ウイルスを蓄積した二枚貝(カキ・アサリ・シジミなど)の生食・半生食(半生のカキフライ・アサリの酒蒸し・シジミの醤油漬けなど)およびウイルスで汚染された食品を摂取して経口感染するもの(食中毒)と、食中毒によって感染した患者(あるいは二次感染した患者)の糞便や嘔吐物に排出されたウイルスから経口感染するもの(伝染性胃腸炎)の二つに分けられます。
直接摂取した食品から発生するため、食中毒のケースが特に問題とされますが、医学上は食中毒と伝染性胃腸炎のケースに明確な違いはありません。
症状
症状の始まりは突発的に起こることが多く、嘔吐、下痢、腹痛等が起こり、吐き気が治まった後は悪寒・発熱を伴うこともあります。これらの症状は通常1~2日で治癒し、後遺症が残ることもありません。
ただし、免疫力の低下した老人では死亡した例も報告されています。また、感染しても発症しないまま終わる場合(不顕性感染)や、風邪と同様の症状が現れるのみの場合もあります。
「嘔吐、下痢、腹痛を伴う風邪」という表現がありますが、それはノロウイルスなどによる感染症である可能性もあり、単なる風邪ではない場合があります。ノロウイルスによる感染が成立している場合、糞便中にはウイルス粒子が排出されています。
診断
ノロウイルスは、病原体検査に必要な組織培養法は確立されておらず、検出方法として電子顕微鏡法、ELISA による免疫学的抗原検出法、さらに核酸増幅技術を利用し、ウイルス遺伝子を直接検出する分子生物学的検出法が開発され、厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課の通知(食安監発第1105001号)に基づく RT-PCR 法 が公定法として最も普及しています。しかし、操作性や迅速性の点でより簡便で正確な検査技術の開発が望まれています。スイフトジーン® ノロウイルスGⅠ/GⅡ「カイノス」の測定原理
『スイフトジーン® ノロウイルスGⅠ/GⅡ「カイノス」』は、NASBA法と核酸クロマトグラフィーを組み合わせた、ノロウイルス遺伝子を検出するための研究用試薬です。
NASBA法の原理
- プライマー : 2種類
- 酵素 : 3種類(AMV-RT、RNaseH、T7RNAP)
- 増幅産物 : アンチセンスRNA
※詳しくは、NASBA試薬のページをご覧下さい。
NASBA Amplificationキットについて NASBA法での増幅過程
核酸クロマトグラフィーの原理
メンブレン上の捕捉オリゴプローブと、展開液中に処方された着色ラテックス標識オリゴプローブによる、NASBA産物のサンドイッチハイブリダイゼーションによって検出します。
試薬構成
品番 | 品名 | 包装 | 貯法 |
---|---|---|---|
GP-3150 (増幅試薬) | NASBA試薬 | 10回分×2 | 2~10℃ 冷暗所 |
プライマー溶液 | 110μL×1 | ||
NASBA酵素試薬 | 10回分×2 | ||
精製水 | 60μL×1 | ||
GP-3300 (検出ストリップ) | 検出ストリップ | 1本×20 | 2~10s℃ 冷暗所 |
展開液 | 2.0mL×1 | ||
プレートシール | 22枚 | ||
反応用チューブ | 20本 |
キットの外観
使用方法
EXTRAGENⅡについてあらかじめ、検体から RNA を抽出します。検体からの RNA 抽出には、各施設で使用されている RNA 試薬 (EXTRAGENⅡ等) を使用してください。
NASBA反応溶液:NASBA 試薬 1 チューブにプライマー溶液を 55 μL 加え、直ちにボルテックスミキサーにて十分に溶解します。
付属の反応用チューブに NASBA 反応溶液を 5 μL ずつ分注します。
1)の検体前処理で得た抽出 RNA を 2.5 μL ずつ 各チューブに分注します。分注後、10 回ピペッティングし混和します。
各チューブをヒートブロック (65℃) で 5 分間保温します。
保温後、ヒートブロック(41℃)で 5 分間保温します。なお、この保温中に NASBA 酵素液を調製してください。
NASBA 酵素試薬 に 30 μL の精製水を加え、10 秒程度待ってからタッピングにより溶解します。
各チューブをヒートブロックに入れた状態のまま、NASBA 酵素液を 2.5 μL ずつ添加し、4~5 回ピペッティングして混合します。
ヒートブロック(41℃)で 90 分間保温します。
増幅反応終了後のチューブに、展開液を 3滴 滴下します。
チューブに検出ストリップを入れて 3 回出し入れを行います。
チューブに検出ストリップを入れてから 20 分後に結果を判定します。
判定例
メンブレン上の別々の位置に GⅠ及び GⅡ遺伝子捕捉用オリゴプローブを固相化しており、1 回の検出でノロウイルスの遺伝子群を識別します。
抽出法
抽出方法の一例
前処理
糞便を PBS (-) 又は生理食塩水で溶解し、10 % 乳剤を作成します。
糞便の 10 % 乳剤を激しく撹拌します。
10,000~12,000rpm, 20minで遠心します。(4℃冷却遠心を推奨します。)
遠心上清を回収し、RNA 抽出を行います。
EXTRAGENⅡを使用
変性工程
微量遠心チューブに、試薬 1 を 2 μL、検体を 100 μL 分注します。
室温で 10 秒間激しく撹拌します。
試薬 2 を 500 μL 加えます。
室温で 10 秒間激しく撹拌します。
12,000 ~ 15,000 rpm, 3 min で遠心します。(4℃ 冷却遠心を推奨します。)
上清を吸引除去します。
洗浄工程
試薬 3 を 200 μL 加えます。
室温で 10 秒間激しく撹拌します。
12,000 ~ 15,000 rpm, 3 min で遠心します。(4℃冷却遠心を推奨します。)
上清を吸引除去します。
溶解
RNA はチューブ内のペレットに含まれています。精製水を 250 μL 加え、溶解します。